錬は翌週退院した。

手続きを済ませて
マンションへ連れて帰り
昼食を摂った後、
あたしは出かけた。

今日は、母の命日だ。

まだギブスの取れない錬を残し
あたしはうす紅の紫陽花と
母の好きだったなでしこを買い
嵐山にある母の墓に向かう。

錬の退院の日が命日であることも
今日あたしが京都にいることも
すべて偶然とは思えなかった。

母が会いたがっている気がした。

東京でいろんな経験をした。
楽しいことも辛い事も・・・

でもあたしは生きている。

母がくれたこの命を
大切にしていこう。

残された錬も
母の分まで精一杯生きてほしい。

あたし達は母さんの忘れ形見・・

母の思い出と共に生きてゆく。