「雨宮!悪いけど、これ、まとめて貰えないか?
一部ずつこのホッチキスで留めてもらえればいいから」




「はあい。」



そう答えてから考える。
後期の学級委員の仕事など楽なものだ。

たまにある全校集会や学年集会で「先頭はここに並んでね」って声をかけるのと、こういう風に少しだけ雑用を手伝えばいいのだ。


滅多にない目立つ仕事は、もう一人の学級委員の杉本 深琴(すぎもと みこと)くんがやってくれるから。







誰もいなくなった教室にカシャンカシャンと音が響く。

理由もないけど、ホッチキス留めは好きなんだ、わたし。要領悪くて遅くても、大きな失敗ってないし。



そういえば、と。

今留めている冊子をパラパラと眺めてみる。


「もうすぐ球技大会かー…」


自然に声がもれて慌てて口を押さえる。

一人で話してて怖い人だ、わたし。
誰もいないことが分かっても、一応誰もいないか確認するー…





「わっ」


「えっ。へっ、きゃあ!」



変な声がもれた。

わあ、心臓が高鳴ってる。