―――夜。


幼馴染みで結婚前提に一緒に暮らし始めた、高校の先生、顕奘(ケンゾウ)さんが研修の出張から帰ってきた。


お互いの両親が住むマンションの下の階。


「おっ、おかえりなさい…」


なんとなく、左手を隠す。
ぴくっと眉を動かした。


「今なんか隠したな」


「え"っ!?なにも!?」


「怪しさ満載じゃねえか」


言うと、すたすたと近付いて、無理やり腕を掴まれる。


「………?!これは何だ」


左手の、薬指に、見覚えのない指輪がしっかりとはまっていた。


………そりゃ怒るよね。


「………誰にもらった」


「えっ!?」


「どこの男にもらったって聞いてるんだよ!!」


まだ、顕奘さんからはもらってなかった。


未成年だし。
二十歳になったら、って。