つき合ってほしいと言われてから、何度か連絡は来ていたけれど、気まずさから返信もせずに、1カ月あまりの時が経っていた。


なんて返事をしたらいいのかわからなくて、そのわりに蒼佑くんからの連絡は変わり映えのない、いかにも普通のものばかりで、それがまた返事の遠のく理由となった。


なかったことになっているのか、世間話の後に返事を聞かせてと言われるのか。自分から話を掘り返すわけにもいかずに、今日を迎えてしまった。こんなことなら、あらかじめ連絡をとるべきだった。







想定外のことに、お酒の味もよくわからなくて、ろくに味わうこともできずに時間ばかりが刻々と過ぎていった。



「めっちゃ楽しかったっす!」



 また行きましょうね、と今夜は悪酔いすることもなく、軽快な足取りで帰ったことに安心しつつ、まだ帰ろうとする様子のない蒼佑くん靴を見て、下を向いたまま溜息を吐いた。

中島くんが帰り支度をしているとき、何やらこそこそと楽し気に内緒話をしていたけれど、気疲れしていて、耳を傾けようともしなかった。



「百合子ちゃん、もう一軒行かない?」



 時計を気にするふりをして、腕に何度も視線を向けた。

すると、怒るばかりか清々しい顔をして、時間そんなにとらせないから、とにこにこ笑って、歩き始めた。

それとも、とぱったり足を止めた蒼佑くんの背中に勢いよく鼻をぶつけてしまい、思いのほか痛くて涙目になってしまう。




目を丸くして、一瞬動きが止まったけれど、すぐに鼻を撫でてきて、百合子ちゃんちにしよっか、と悪戯な笑みを向けられた。

けれど、帰るんなら自分ひとりで帰りたい、と素っ気なく返事をすると、ちぇ、つまらないな、と言葉にそぐわない満面の笑みで、また歩き始めた。








 店内に入ると、何頼む? とメニューを渡される。

一軒目で既にお腹を満たしていて、あまり食欲がわかなかったけれど、ソフトドリンクだけを注文するのは気が引けて、甘いお酒を一杯注文した。

同様に、蒼佑くんも一杯だけお酒を注文していて、手元に来るとすぐに一口口に含んで、ぴりっと真剣な空気を纏って話し始めた。



「……この前の、告白の返事、なんだけど」



 いいかな、と私の目をじっと見つめてくる。——きた。

一軒目で蒼佑くんの姿を見て、こうなることは予想していた。だから、少ない時間の中でも自分なりに整理して出した答えを、そのまま伝えることにした。