途中でイルカショーを見て、年甲斐もなくはしゃいでしまった。


到底水しぶきが届く距離ではなかったけれど、イルカの大ジャンプのたびに体が触れてしまったりした。休みの日の水族館は盛況ということもあり、混雑していて他のお客さんとのスペースがあまりない。

あからさまに蒼佑くんに寄りそって座るのは躊躇われたけど、腰に手を回して混んでるからこっち、と引き寄せられたのには驚いた。その手はすぐに離れたのだけれど。






 イルカショーを満喫した後は、満遍なくフロア全体を見て回って、お土産売り場に立ち寄った。

魚を模した、きれいなステンドグラスみたいなアクセサリーやかわいいカップ。

お菓子もたくさん種類があって、所狭しといろいろなお土産が並んでいた。その中でも、かわいいイルカやペンギンがモチーフのぬいぐるみが大きく区画を占めていた。





「百合子ちゃん何か欲しいのない? せっかくだからさ」



 売り場をいろいろ見て、ぬいぐるみ売り場で立ち止まる。



「こういうの、女の子って好きだよね」



 部屋のどこに置くんだろうと、蒼佑くんは、ブルーとピンクの触り心地の良さそうな30センチほどのイルカのぬいぐるみを手にしてみせた。



「そうかもね。でももう学生じゃないし、ぬいぐるみ好きな人じゃないと買わないかも?」

「へえー。そんなもんかなあ」



 意外だった。

蒼佑くんはこういうのを進めてくるタイプだと思っていた。

可愛いものが、好きそうというか。その様子にピンときて、「元カノとかにぬいぐるみ買ってあげてたんだ?」と悪びれもせず口にした。



「え! ……その通りです、はい。よくわかったね」

「ふふ、ベタなデートっぽくていいと思います」



と、私も棚からぬいぐるみをとって見せた。




「ぬいぐるみが好きな人もいるだろうけど。蒼佑くんとデートしたって証が欲しいんじゃない? それでいて蒼佑くんにもらったっていうのが。

あそこのシルバーのネックレスとか、結構値段張りそうだもん。こっちのほうがおねだりしやすくない? ぬいぐるみだって高価なんだけどさ」



「うーん。女の子ってやっぱり難しいなあ。何考えてるのかよくわからないね」




 そんなもんだよ、と棚にぬいぐるみを戻した。

再び売り場を見て回り、カトラリーグッズの並ぶ場所で足を止めた。



「このカップ買おうかな、お箸とかでもいいかもなあ」