同世代の4人が集まったからか、最初はぎこちない雰囲気もあったけれど、それはすぐに解消された。
彼氏や彼女、結婚の話題が一番の盛り上がりを見せていて、できればあまり面識のない人とはしたくない話だったけれど、うまく切り抜けられた。と、思っていたのだけれど。
「蒼佑くん、何か頼もうか?」
「えっ?」
「グラス、空いてるなあって思って。それとも水飲む?」
「あ、ありがとう」
「ううん。ちょうど何か頼もうと思ってたところだったから。何頼む?」
メニューを取ろうとしたら、蒼佑くんが一緒に見よう、と声をかけてくれた。こんな人が人見知りだなんて、珍しいこともあるものだ。
「おれウーロン杯にしようかなあ。百合子ちゃんは?」
「うーん。あっ、ここ米焼酎あるんだ! これにする」
「百合子ちゃん、焼酎好きなの?」
「うん、焼酎好きなんだ。へへ、女らしくはないよね」
「全然全然! 米って珍しいなって思って。芋焼酎飲む人は結構いるけど」
「そうだね、米焼酎は少数派かも。ビールとか日本酒みたいに、どこにでも置いてあるお酒じゃないもんね」
「そういえば、ミズキも米焼酎よく飲んでるなあ」
ギクッとした。
珍しい名前ではないと思うけど、そんなに多いわけでもないように思う。
「ミズキ」という文字に、未だに反射で反応してしまうのを、情けなく感じていた。
「あ、ミズキっておれの同僚ね」
「へえ。そうなんだ」
「あれ? 百合子ちゃんってもしかしてファーブの柔軟剤使ってる?」
「え? うん、そうだよ」
「しかもムスクの香りとみた」
「えー! すごい、当たり! よくわかったね!」
「それ、結構珍しいよね? おれんちの近くのドラッグストアにおいてなかったもん」
「そうなの。うちも一番近くのドラックストアにはおいてなくて、ちょっと先のところまで買いに行ってるんだ。これ、使い慣れてて」
「そうなんだ。さっき話したミズキってのもこれと同じの使ってたんだよね。だからあれ? って思ったの」
ふと、ある人物が頭をよぎった。
米焼酎が好きで、私と同じマイナーな柔軟剤を使っていて。
しかも名前がミズキ。
でもその「ミズキ」さんが男性だとは限らないから、あまり考えないようにしていた。