結局、今日も私の部屋に「帰って来た」岩田さんは。
「すっげぇ深読みしたね。」
驚いた顔で、振り返った。
片手でネクタイを緩めて、シャツを脱ぐこの仕草が好きで。私は膝を抱えて、ベッドからそれを見てる。
『深読みって・・・だって、そういう意味じゃないですか。』
「違うよ。その後の話、聞いてないくせに。」
笑いながらスーツのジャケットをハンガーにかける。雑なくせに、岩田さんはスーツだけは丁寧に扱う。
『だいたい、なんで言っちゃったの?もう本当、明日からどうしたら・・・』
「嫉妬。決まってんだろ。」
あっさり言ってのけた岩田さんは、下のズボンはそのままに隣に腰掛けてきた。
「我慢したんだけどさー、やっぱ無理だったわ。あの男、いつも澪のこと見てんだよな。」
嫉妬?岩田さんが?
驚いて見上げた横顔は、らしくなく不貞腐れていて。
「とりあえず、そんなに落ち込まないでよ。公表されて落ち込まれたら、俺の方が落ちるって。」
『嫉妬、したの?』
「は?」
『岩田さん、私に嫉妬してくれたの?』
驚いた表情になるのは、今度は岩田さんの番。
「するだろ、普通に。だって澪が好きだし。」
彼氏いないって言ったから、誘われたんだって。
言いたくなくなってしまうほど、可愛いと思った。
衝動的に、首元に腕を回して抱きついたら。
「わ、!」
ノーガードだった岩田さんは、私の背中を柔らかく抱きながら後ろに倒れた。
もう、慣れっこでも恒例でも、なんだっていい。
岩田さんが、今ここにいる岩田さんが大好き。
『・・・ありがと。』
「なんだよ。笑
今日は泣いたり怒ったり、忙しいな。」
ギュッと抱き締めてくれる素肌の腕が嬉しくて、私はもっとギュッと力を込めた。
「澪は?澪は、俺に嫉妬しないの?」
『しないわけじゃないですけど・・・』
「けど?」
『どうしたらいいか分かんないんです。』
嫉妬って、聞こえが悪いけど。
きっとその奥にあるのは、恋人たちにとって大切なこと。
だから私は、嫉妬よりもその先の。
『好きな気持ちを、どう表現したら正しいのか分からないんです。』
岩田さんの瞳は、驚いたように丸く見開いた後。
確かな熱を持って、細くなって。
掴まれた肩を軸に回転した身体は、1秒もかからず岩田さんの下になって。
いとも簡単に、組み敷かれていた。