少しの間静まり返った教室が、またざわめきだした。
「何あの子?誰かの兄弟?」
「何かのイベントー?」
「変なカッコだけど可愛いー!」
皆が好き放題言い出す。
その間に少年は「よいしょ」と、教壇によじ登る。ペラリと少しだけ捲れた裾から、包帯の巻かれた素足が見えた。
苦戦しつつも何とか教壇の上に上がり、ちょこんと腰掛ける。
その様子に「可愛いー」と声が上がる。
そんな中、一人の少女が前に進み出た。
さらさらの長い黒髪でつり目の、真面目そうな子だ。
「どうしたの?お家のひとは?」
「居ナイヨ」
少年は、片言喋りだ。やはりハーフなのだろうか。
それより、家の人が居ない……つまり、一人でここに来た?
「そう、居ないの……?
……あ」
困ったようにあたりを見回した黒髪少女は、あるところで視線を止め
た。
ほっとしたような顔で尋ねる。
「あなたの弟?」