「うわっ⋯⋯重」



ズシンとのしかかる重量に声が漏れる。



せいぜいファイルが数枚あるだけだろうと思ったが、それはとても甘すぎたようで。


進路室にあったのは、容赦なく置かれた分厚い本三冊に、紙テープでまとめられたプリント。



二回に分けて運ぶようなものなのは明らかだが、



⋯⋯それは面倒くさい。 持てるなら一回で持ってっちゃおう。



進路室は教室と一階違って二階にある。 階段を登るのが一番の難所。




そんなことを思いながらゆっくりと歩いていると、重いが意外に運べていたりする。



他の生徒も部活だからすれ違わないし、すごく楽に行けるな。




そう思った時、



ドンッ


「いって!」



曲がり角に差し掛かった時、衝撃とともに私の手が離れ、ザザザーと資料類が床に流れ落ちる。


私は情けなく尻餅をつき、ぶつかった相手も転びそうになっていた。



目を開けると、そこにいたのは知らない男子。
ユニフォームを着ていたサッカー部の生徒だった。



転んだ私を見た男子は慌てた顔をして「大丈夫!? ゴメン!」と丁寧に謝ってきた。


同時に転んだ私に手を差し伸べようと近付いてくる。



それだけでビクビクッと体が硬着して、腰が泣いた。



「だ、大丈夫です!」


急いで後退りをし、顔を隠すように手を前に差し出す。



自分でも最低なことをしていると思ったが、どうしても頭と体が一致しない。
男の人を見るだけで怖くなる。



「ごめんなさいっ」



落とした資料を拾おうとしてくれた男子生徒に対しても、出てくる言葉は『ごめんなさい』だった。

さすがの相手も不自然な顔をし出す。



「だい、じょうぶです。 自分で拾いますから⋯⋯どうぞ気にせず⋯⋯ごめんなさい」




細い声でそう言うと男子生徒も小さく「お、おう」と返事をして、そそくさと階段を降りていった。