「立花君…私が代わったのに」


本当なら私が代わっていたのに、立花君は私に代わって立ってくれた。



私は座って、立花君は目の前で吊革を掴んでいる。



「何言ってるんですか。
ここは俺が立つべきです。紫乃先輩は座っていていいんです」


「でも……」



なんとなく立花君の言いたいことがわからなくもない。


それでも自分だけ座っているのは、申し訳なく感じる。



「ふふ。素敵な彼氏さんですね」


「えっ?」



突然、隣の妊婦さんが話しかけてきた。

きっと私たちの話を聞いていたんだろう。