女の子に告げられたのははっきりとした拒絶の言葉。
大人びた言動が混じるのは、周りの大人の影響だろう。
受け入れ難いほど、女の子の心を大きく揺さぶった。
そうだ、女の子が気にしていたクラスメイトはクラスからいじめを受けていた。
いじめにささいも何もない。
両親がいない、というのはいじめを受けやすい・弱いもののひとつだ。
周りも自分も当たり前のように持っているものなのに、持たないものがいる。
それは容易に優越感を得られるだろう。
だが、その子は大人から付き合い方を言い含められた「強い子」になった。
担任から父母へ、父母から子供へ。
「あの子とは極力関わるな」
充分すぎるお墨付きは、子供に不満をもたらす。
優越感を容易に持てる相手が目の前にいるのに、それにひたれないもどかしさ。
何か誰かより優れていたい、と思うのは本能なのか教育なのか。
もどかしさはつのり、そして標的を変える。
次に弱い子を探す。
たまたま選ばれてしまった。
女の子の代わりに、わずかに劣る点を見つけてはいじめられた。
関わるなと言われた強い子に構わせるよう、好物を給食をあげさせたりした。
その後、先生に「好き嫌いをするな、関わるな」と怒られたことを女の子は知らない。
弱さが積み重なれば、無邪気で加減を知らない心はひたることから抜け出せなって行く。
いじめられている子も、本来なら自分より弱い子がいることを知っている。
それなのに周りは自分を執拗につつく、それがその子の代わりと知っている。
歪んだ針でつつかれ芽吹いた感情を、ぐねぐねと積み重ねていく。
女の子を強く強く否定する、そんな思い。
胸中に育てこんだそれが、何かをきっかけに花開かせた。
……悪いのは大人だ。
大人には責任がある。
ただそれを負うべき大人がいなかった。
悔やむほかない。
女の子はクラスの真ん中で大声で泣いて、叫んだ。
おとぉさん、おかぁさん。
と、一度だけ。