赤、青、黄、緑、紺、茶、白、黒・・・

この世にはたくさんの色が溢れている。

色があることによって僕らはある時は心が安らぎまたある時は悲しくもなる。

生まれて初めてこの目が映した色は何色だったのだろうか。






鳥のさえずりに目が覚めた。毛布から顔を出して窓を見ると羽の先が青みがかった綺麗な小鳥が2羽戯れていた。
外は太陽が昇りすっかり明るくなっていた。
欠伸を噛み殺しながらベッドから出て白いワイシャツに袖を通し、黒のジーンズを穿くと部屋を出て1階のリビングに向かった。

手早く朝食の支度を済ませるとまだ寝ているであろう彼女の部屋へと向かう。
2,3回ドアをノックして開けると案の定ベッドの中でスヤスヤと寝息をたてていた。
金色の少し癖のある長い髪。前髪はついこの間僕が揃えてあげたばかりだった。暗がりでもわかるくらい色白で華奢な体。
ベッドの空いたスペースに腰かけるとその額に手をやると前髪をかきあげて額にキスを送る。

『シキ、朝だよ。』

そう声をかけてあげるとゆっくりと瞼が開きぼんやりと僕を見つめるとしばらくして意識がはっきりしてきたのかニコリとほほ笑んだ。

『おはよう、コノハ。』

僕が手を貸して起こしてあげるとそのまま抱き上げてリビングまで連れて行ってあげる。最初の頃は嫌がられたけど自分の体力や腕力、脚力の無さを自覚したのか抵抗しなくなった。


リビングにある車いすに座らせるとひざ掛けをかけてテーブル前に移動し朝食を摂り始める。

『コノハ、今日のご飯もおいしいわ。いつもありがとうね。』

オムレツを頬張るとシキは嬉しそうにそう言う。

『そう言ってくれてうれしいよ。』




シキと僕、コノハは一卵性双生児・・・つまりは双子だ。
双子の姉であるシキは生まれた時から色別判断ができない色覚障害というものを患っている。シキの目は全てを白黒にしか映せない。
生まれた時から2色しか知らない彼女はさほど不便とも思っていないようだが周りの障害者に対する風当たりは強かった。
シキを守りたい一心で僕は生まれ育った町を離れ人のいない静かな海沿いの土地にやってきた。