「ここまできて持ってないなんて言わないでくれな、グルーリーさん…」
黙る時間が長かったためか、若干引きつった顔で答えを待つギルに、グルーリーは意地悪く笑った。
「ふふ。ない、とは言わないわ」
「……というと?」
「在るけど、貴方達に解るかしら?」
何とも奇怪な質問の返し方だ。
此処には確かに鏡はあるというのに、私達に鏡があるかどうか解るか、と諭されているのである。
「ひーっぱるねえ」
「当然よ。簡単に話できる代物じゃあないのだから」
魔女の鏡は真実を映す。
そんなものが此処にあると知って押しかけてくる輩もいたけれど、皆一度もそれを確認することができず帰って行った。その価値を知らずに鏡を手に入れようなんて、全くもっておこがましい。
「…それじゃあ、私達が鏡を欲しがる理由を言えば教えてくれる?」
「アオ!」
「別に隠してるつもりはないからこんなん何てことないよ」
「それは、交換条件かしら」
「そう、代わりに鏡の事を教えてください。
ーー言っときますけど、条件にするだけの価値がある理由だと思ってますよ私は」
(…また、)
グルーリーは無意識に笑みが漏れてしまった。
何処からか湧き上がってくるのか底知れない、根拠のない自信。それなのにどうしてこうも、心動かされるのだろう。
信じてみようという気にさせられてしまう、
アオ、か。
(この娘は実に興味深い)
ーーー"彼女"に会わせたい人材、だ。
「グルーリーさん?」
「!…え、ええ。じゃあ教えてもらえるかしら、貴方が追い求める理由を」