ーーーー嵐が完全に過ぎた後、その場に座り込んだアオは人生で初めて腰が抜けていた。
「ほ、本当に死ぬかと思った…」
乾いた笑いが止まらない。
そこにしゃがみ込むように目線を合わせてくるギルは、如何あってもやはりあれの兄弟なのだと思い知った。
「大丈夫か?」
「そんなわけないでしょ…ナンナンデスカ、君の兄上様は」
あの雰囲気を一気に打ち消せる君も君だけど。
とんだ化け物揃いの国だな、オリガスは。
まだまだ私の知らないオリガスの奥深さを思い知った、とんでもない1日である。
「……ふっ」
「なに」
「俺、アンタがビビってるとこ初めてみた」
「っあったりまえでしょうが!あんなん前にして平気でいられるかって!」
心臓を持っていようと私はただの女なの!
そう怒鳴るアオにギルは更に身体を震わせるように笑い出して、もうこの場はなんなのか、召集がつきそうにない。
「ーーーー本当に追い払っちゃったのねえ」
「「あ」」
後ろから聞こえた耳に残る声の主は、グルーリーのものだった。
部屋から出てきたのであろう、もしくは最初から見ていたのかもしれない彼女は、安心しきったように微笑んでいる。
「本当に追い払うとは思わなかったわ」
「はは、だから言ったじゃないですか…期待は裏切らないって」
「ふふ、腰抜かしちゃってるのに、大層な事言うのね」
「……あはは」
それについては勘弁してもらいたい。