「仲良いのね」

「「良かないわ!!」」


ハモった台詞が何とも阿呆らしい。

とりあえず、ギルは睨んでくるアオを無視して先ほどまで触れていた刀に目を向けた。


「…これ、なんで危ないんですか」

「刀だからよ」

「は、」

「刀は鍛錬した者が魂を込めて創り出すモノ、その想いは刀身に宿ると言われているわ。その刀にももちろん、魂が宿ってる。」

「なんか呪いでもかかってるの?これ」

「ばっ、アオ!」


ヒョイっと、刀を持ち上げたアオに焦ったギルだったが、何ともなさそうに刀を振っている姿を見て目を見開いたのはギルだけではなかった。

「……あら?貴方には、平気なのね」

「え、これ人によっては何かおきるんですか」」

「刀が主だと認めなかった場合、柄に触れると失神したり…最悪苦しみ出して死ぬパターンもあったわね」

「………ゾッとするよーな話だな」


つまり刀はアオを認めたということだろうか。
心臓を持っていたり、特殊な刀には認められるし…つくづく彼女には驚かされるばかりである。

しかし、刀を何度か持ち直すアオはふと首を横に傾げ始めた。


「んー。多分この刀、私が持つのを嫌がってる」

「いや、アンタ普通に持ってんじゃん」

「これ見てよ」

刀を持っていた右手の平を差し出されて、ギルはギョッとした。手の平の皮膚が真っ赤になっているのだ、火傷、と言ってもいい。


「っば、馬鹿野郎!」

慌てて刀をアオから取り上げたギルはアオを一喝した。

「アンタ曲がりなりにも女だろ!どーすんだよ跡残ったら!!」

「曲がりなりにもって、失礼な!」

「いーや言わせてもらうね!昨日から思ってたけどアンタは物事を軽く見過ぎなんだよ!だから万年金欠なんだろ!」

「なんで金欠なの知ってんのさ!失礼な!」




ーーーーーまた始まった口喧嘩に、第三者のグルーリーは呆れ顔だったが、今度はギルの右手に握られた刀を見て目を細めた。

「(……刀が彼を受け入れている)」

言い合いに熱くなるギルは気づいていないが、アオとは違ってその手には怪我すら見受けられない。むしろ、刀身は彼を待っていたかのように更に輝きを増している。

刀が、主人を選んだということか。


(なかなか面白いお客様だこと)


"数十年"、この刀を管理してきたが初めて拒絶反応を示さない客に出会ったグルーリーは、ひっそりと口角を上げていた。