「おーい、店主さーん。いますかー!」

まるで子供が遊びに来たかのような言い方にギルは呆れたものの、外より暖かい店の中にホッとしていた。歩くスペースは狭く、埃っぽいのが気にはなるが。

アオが奥に進んだことを確認する途中で、ギルはふと、壁に立て掛けてある一つの刃に足を止めた。




「(……こんなとこに、なんて代物だよ)」


徐にそれの刀身に触れると、恐ろしく手入れされているのが分かる。自身の姿がハッキリ反射するほど研がれており、触り心地は絶妙に滑らかであった。油断していると皮膚が切れてしまいそうだ。

そして刀の隣で木箱に沈んでいる銃も、その銀がよく磨かれている。


「お兄さん、それに触れると怪我するわよ?」

「っ!」

バッと勢いよく振り返ると、そこには着物をヤケに色っぽく着崩した女がほくそ笑んでいた。
真っ白な肌に真っ赤な唇が印象的な、美女だった。残念なのはその右手に握られている煙草だろうか、煙が薄暗い天井を漂っている。
この店の店主だろうか……にしては若すぎである。

「驚かせてごめんなさいね、最近は若い人少ないからあんまり顔出さないのよ。
嗚呼、私はグルーリー。宜しくお願い」

「あ、はあ…。俺はギル、です」

「ふふ、若々しくて可愛いわ。お兄さんとっても色男ね」


妖艶さが漂う女性を久々に見たせいか、思わずグルーリーさんの隣にいるアオと見比べてしまったのは許してほしい。

「…何か言いたいことがあるのかな?ギルくーん」

「……はあ」

「人の顔見て溜息つくな!!」


色気ゼロである。