彼女が話を終えた時、時計の針は何時を指していたのだろう。全ての話が終えた時、2人のグラスは空いていた。彼女の流す涙はグラスに注がれる事はなく、ただ、彼女の身を包む真紅のドレスを濡らしていった。俺は声をかける事もなく、静かに彼女の肩を抱き寄せ、彼女の涙が止まるまでずっと黙っていた。

「ありがとう。おかげで落ち着いたわ」

そう言う彼女の顔を見た途端、ふと胸に熱いものがこみ上げてきた。参ったな、どうやら彼女に惚れちまったみたいだ。