それから俺達に会話はなく、ただただ静かに時が過ぎていった。何杯目かが注がれた時、彼女が隣にやってきた。

「あの時、どうして私に?」

「さあ、なぜだろうな。君が綺麗だったから…それではダメかい?」

「お上手なんですね」

あの時感じた儚さは薄れてはいたが、まだ彼女からは脆さを感じていた。きっと俺はそんな彼女のために優しい男を演じようと思ったのだろう。だから彼女が

「少し…身の上話をしてもよろしいでしょうか?」

と言った時、

「自分でよければ、お聞かせ願えますか?」

と答えたのだろう