俺の前にグラスが置かれる。そして、彼女の前にも同じものが置かれる。彼女が俯いていた顔を上げる。

「あちらの男性からでございます」

彼女は驚いたように俺を見る。俺はその顔に笑いかけると、静かにグラスを持ち上げた。

「君のその瞳に出会えた奇跡に…乾杯」

キザったらしいセリフを言いながら、どこか寂しそうで、まるで捨てられた子猫を連想させる彼女に語りかけ、そっとグラスを傾けた。

「ありがとう…ございます。では、私は…あなたのような素敵な殿方に出会えた運命に…乾杯」

少し寂しそうに笑いながら、彼女もグラスを傾ける。少しづつ日は沈み、闇が街を包みだしていた。