終業式の終わった教室の中には、数えるくらいの生徒しか残っていない。
目の前に、成績表を置いた俺は放心状態で椅子に座っていた。
「隆~!、何やってんの?待ってても来ないから、迎えに
きてやったぞ!」
恵子の声に、一瞬、ビクッとなって、我にかえる。
「速く、帰ろうよ~」って言いながら近づいてくると、
「おっ!成績表、発見!」
当然のように、中身を見だす。
「なにこれ!数学、赤点じゃん!」
なにも、そんなに大声で言わなくても・・・
教室に残っている生徒の視線が痛い。
赤点とは、笑えない馬鹿の方のことだ。
「数学って言ったら、隆の担任で、野球部顧問の宮部先生の担当教科じゃない!」
「うん、宮部先生、笑ってた」
「それって、苦笑いってやつじゃないの?」
「うん、たぶん、そうだと思う」
「じゃあ、補習決定ってこと?」
「うん、明日から3日間」
「えーっ!予定が狂っちゃうじゃない!」
「なんか、予定あったっけ?」
「別にないけどさ」
なんとなく、立ち直ってきた。
「ないなら、いいじゃん。お前な~、人の成績表見たんだから、お前のも見せろよな!」
後になって、後悔することになる。後悔先に立たずってゆうやつだね。
「いいよ」って言って、カバンから自分の成績表を取り出すと、ハイッて、渡された。
見なけりゃ良かった。
「お前、何食うとこんな良い成績とれるわけ?」
「食べ物でいい成績取れたら苦労しないわ!日々の努力と精進の賜物じゃ」
どこぞの、武道家か?
「あと、授業を寝ないでキチンと聞いてることね!」
ぐうの音も出ない。
「でも、このままだったら、ヤバいんじゃない。二学期も赤点なら一週間の補習と追試だし、三学期も駄目なら、留年だよ」
うぅ、それだけは避けたい。
「まあ、二学期からは、頑張るんだね」
家に帰って成績表を親に見せたら、さすかに、親に怒られた。
まあ、補習中、弁当を作らなくちゃならないってのが理由らしかったけど。