ファミレスを出たあと、近所のショッピングモールに行った。
あっちの店、こっちの店、恵子に引っ張られて色々廻った。
買いもしないのに、よくそんなに廻れるもんだと思いながら付いて歩っていたが、さすがにちょっと飽きてきた。
「なあ、恵子さんや、親父の遺言で、女のウィンドウショッピングには、つき合うなって、言われてるんだけど」
「ばーか!、おとうさん、まだ、元気に生きてるでしょ。でも、ごめんごめん、次で最後にするから」
恵子に引っ張られていったのは、アクセサリーショップだった。
若者向けのアクセサリーを扱っているらしく、若い女の子で一杯だった。
「ねえねえ、隆、隆!」
恵子が手招きしている。
近づいてみると、手に、小さなネックレスを持っている。
「これ、かわいくない?」
シルバーのキラキラの中心に、小さな淡いブルーの石。
「カワイイんじゃないの」って言うと、
「だよねー!買っちゃおうかな?」
「おいおい、一応、宝石だろ、高いんじゃないの?」
「ここは、若い子向けのお店だから、そんなに高くないと思うけど、大丈夫!2980円だって!」
へーっ!そんなに高くないんだ。もっと、何万って額かと思った。
「買っちゃえば~」
「でもな~、今月、他に買うモノあるし・・・、辞めとく!」
商品を元の所に戻すと、行こうって言って俺の手を引いて、店を出た。
「おい、いいのか?」って聞くと
「うん、他に買いたいものあるし!」
「他に買いたい物って?」
「○○のCD!」
なんか、聞いたことあるアイドルグループの名前が出てきた。
「お前、○○のファンなの?」
「悪い?」
俺を見る目が怖い
「いや、悪くないですけど」
「けど、なに?」
そんなに、詰め寄らないて下さい。
「何でもないです」
まあ、誰のファンでも個人の自由だ。
恵子と並んで歩きながらちょっと考えた。
待てよ・・・
「あのさ、恵子、トイレ行きたくなっちゃったんだけど、ここで、待っててくれる?」
「ん?あいよ~、じゃあ、あそこのベンチで待ってるね」
「悪いな、ちょっと待っててな」
今きた通路を引き返す。
どこだどこだ?あったあった、これこれ!
「プレゼントですか?」
「あっ、はい」
「ラッピングはどうしますか?」
「あっ、適当で・・・」
「リボンは、どうしますか?」
「あっ、いいです」
「ありがとうございいました」
逃げるように、店をでた。
は、はずかし~
急いで恵子の所にに戻る。
「遅かったね~」
ベンチに座っていた恵子が、ピョコンっと立ち上がる。
「悪い悪い」
行こうって言って歩き出そうとする恵子に、
「恵子、これっ!」って言って、買ってきたものを渡す。
「えーっ、何?」
受け取った恵子は、まさかっ、とかいいながら、
「開けていい?」
「いいよ」
ウワーッて言って喜んでる。
「買って来てくれたの?凄く嬉しい!」
そう言って、ベンチに座り込んでしまう。
「恵子に似合いそうだったから」
「本当に、凄く嬉しい」
ねえ、着けてって言って、ネックレスを俺に渡すと背中を向ける。
「おぉ」
ネックレスなんて、着けたことねーぞ!
どーすりゃいんた?
頭からかぶせればいいのか?
この大きさじゃ無理だろ!
しょうがないから、「どうやるの?」
って聞くと、付け方を教えてくれた。
改めて恵子が背中を向けて、髪の毛を邪魔にならないようにかき上げる。
うわーっ、恵子の首ってこんなに細かったんだ。なんか、色っぽい。
ダメダメ、集中しないと
ネックレスを首に廻して、金具を止めようとするけど、小さくてうまくいかない。
良く見えるように、顔を近づけると、いい臭いがしてきた。シャンプーの臭いかな?なんか、手が震えてる。落ち着け!
「なんか、くすぐったい」
俺の息が恵子の首に当たっているらしい。
「もう少しだから我慢しろよ」
ドキドキが、止まらない。こんなに恵子に近づいたのは、初めてかもしれない。いや、近づいたことはあったかもしれないけど、異性として、女性として意識したのは初めてだ。
悪戦苦闘のすえ、やっと、金具を止めることができた。
「出来たよ」
ふぅ、なんか、汗かいた。たぶん、顔も赤くなってるかもしれない。
「ありがと、どう?似合う」
振り返った恵子の胸元でキラキラとネックレスが輝いている。
恵子の顔も少し赤くなっているように思う。