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「最近トモ君、来ないね」

「そうだね」

「忙しいのかしら?」

「そうなんじゃないの」

「でも佐々木さんの話だと仕事もしないで引きこもってるらしいのよ」

「そうなんだ」

「・・・最近トモ君、来ないね」

「なによ、美弥子さん。言いたいことがあるならはっきり言えば?」


美弥子さんはいそいそと蜜柑を用意し、ポットにお湯を注ぐ。

あ、狙ってたな。
クソー。言質を取られてしまった。


「何があったの?」

差し出された賄賂はしっかり受け取る。

「熱っ!また熱湯だよ、もう!・・・『賞とったら付き合って』って言われた。で、取れなかったの」

蜜柑の白いスジを丁寧に取りながら、何でもないように言う。

「そんなのお互いの気持ちが通じてれば関係ないじゃない」

「『通じてれば』ね」

あんな意味不明な軟弱ヤローと通じる気持ちなんかあるはずない!

「芽実ちゃんはトモ君をどう思ってるの?」

「え!?あんな奴ナイよ!顔と身長は普通だけど体つきはひょろひょろだし、おしゃれ感はゼロだし。収入は不安定、出世の見込みも薄い。条件最悪じゃない。初めて会った瞬間からナイって思ってたの」

「芽実ちゃんって、いつも男の人に会った瞬間にありなしを判断するんだ」

「ううん。いつもは特に考えないけど、あいつにはビビッと来たの。『これはナイ!』って」

「他の人には思わないのにトモ君だけ感じたなら、それはトモ君が特別ってことにはならないの?」

「・・・・・・」

ん?

「ビビッと来たんでしょう?」

んん?

「美弥子さん、お茶」

「はい」