だけど、トモ君の言葉はそれと違う。
彼が語っているのは絶望だ。
「前に話した僕の妄想には続きがあってね、芽実ちゃんが付き合う人は結構背が高い人だと思うんだ。きれいな脚を引き立てるヒールをどれだけ高くしてもバランスとれるくらいの。顔はもちろんイケメンで、高級なスーツもサラッと着こなせて、さわやかな笑顔で契約をガンガン取ってくる。当然収入もいいから家は高級マンション。きれいな夜景とおしゃれなインテリアに囲まれて、常にストックしてあるワインの中には芽実ちゃんが好きな銘柄のスパークリングワインもある。それを飲んでちょっと芽実ちゃんが酔っぱらった頃にさ、ものすごくさりげない仕草で小さな箱を取り出すんだよ。中身はもちろん婚約指輪。芽実ちゃんの細い指には大きすぎるくらいのダイヤがたくさんついてる。驚く芽実ちゃんの返事なんか聞かないで彼は━━━━━」
バンッと私は膝の上に置いているバッグを叩いた。
「その陳腐な妄想、いつまで続くの?」
「いつまででも。芽実ちゃんが幸せな結婚をして、子どもができて、その子が成長して・・・ずっとだよ。少なくとも君の相手は泥まみれの男じゃない。収入が不安定な男じゃない。こんな田舎に住んでる人間じゃない」
「・・・ずいぶん、勝手に決めてくれるじゃないのよ」
「自分の立ち位置くらい最初からわかってるんだ。ちょっと色気を出して踏み込んじゃったから、ここで引き返さないと大変なことになる。だからもうおしまい」