一年に数回あるかないかという爆睡をこのタイミングで繰り出して目が覚めると、トモ君はもう身支度を終えてソファーにいた。
「おはよう」
「・・・おはよう」
いつもと同じ声、いつもと同じ笑顔、いつもと同じトモ君だ。
「芽実ちゃんは寝起きもかわいいね」
「あんたは寝起きもくすんでるね」
「あはは!寝てないからね」
昨日までと何も変わってない。
これはトモ君が守ってくれたものだ。
それにホッとしてベッドを出た。
バスルームで着替えとメイクを済ませて戻り、一緒に朝ご飯を食べた。
クロワッサンをかじりながらトモ君を盗み見る。
もし、昨日トモ君が私の提案にのっていれば、今こんな風にご飯を食べることはできなかったと思う。
夜中のうちに後悔して、ホテルを飛び出していたような気がする。
勝手な話だけど、トモ君にもがっかりしていたんじゃないかな。
ん?
「がっかり」って表現おかしくない?
それって、私がトモ君を高く評価してたってことになるよね。
底辺に見ている人間に対しては「がっかり」なんて言わないもの。
「たまにはパンもいいね」
「あとでお腹すくけどね」
考えたくないことに思考が向きそうなので、私はクロワッサンにスクランブルエッグをいかに上手にはさめるか、ということに集中した。
「今日、このあとどうする?一人で行きたいところがあるなら、僕はすぐ帰るよ」
東京を満喫したいと思って、行きたかったお店を事前にいろいろチェックしてきていた。
でも、
「もう、帰りたい」
「一緒に帰る?」
「うん」
東京は楽しい、大好き。
でも、ここに住むことは当分・・・もしかしたら二度とないんじゃないかな。
最近ちょっと自分を甘やかしすぎたから。