その感触で、熱で、ようやく真幸が私から剥がれていった。

目を閉じると浮かぶのは、間近にあるはずの豪華な夜景ではなく、広い青空と稲穂をなでる風。


「えっと、体の反応はどうにもならないから、気にしないでね」

トモ君の余計な一言で現実に戻された。

「夢に出てきたらここぞとばかりにボコボコに殴る」

「それでもいいから出たいなあ」

「やっぱり夢も見ないくらいぐっすり眠る」

「僕は眠れないし寝ないよ。もったいないから」


歩き回って、人混みに揉まれて、お酒を飲んで、泣いて騒いで、元彼に襲われかけて・・・いろいろあったから、トモ君の言葉が遠くなっていく。

「・・・来週だね。発表」

「うん。僕にできることは何もないんだけどね」


無意識に「取れたらいいね」とこぼした気がしたけど、どうだったのだろう。
夢の中だったかもしれない。