休みの日の朝、朝食を食べ終わってのんびりお茶を飲んでいると、

「芽実ちゃん、今朝の新聞見た?」

と美弥子さんがその新聞を突き出してきた。

「今まで美弥子さんが見てたんだから見てないよ」

「地方欄見て」

全国や世界の派手派手しい一面をすっ飛ばして、言われた通り地方欄を開く。

今日も県民は心の安心を得られたようだ。
『ガン検診を訴える講演会が行われました』とか『冬のイベントの準備続々と始まる』とか、これといった事件はなかったもよう。

美弥子さんが何に反応したのかわからないまま紙面をめくると、次は地方の有名人をピックアップして紹介するコーナーだった。
たまにある。

今回は全国的に有名なアイドルグループに所属する天川李蘭ちゃんだった。

確か隣の市の出身。
テレビで歌っているところを見かけるけど、なかなか悪くない位置で映っている。
新聞の印刷でも霞むことのないぱっちりおめめに、つやつやさらさらストレートの黒髪。

記事は対談を載せたもので、彼女の向かいの席には印刷汚れと見間違えそうな猫背の冴えない男性が座っている。

『『一握の米』がことばの森文学賞にノミネートされている米田朋策さん』

はー、これか!
美弥子さんがわざわざ教えてくれたから何事かと思ったよ。

紙面を飾るのは何から何までまるで反対な二人。

天川李蘭
米田朋策

名前を並べただけで光と影のようだ。

リランちゃんの輝きで、ヤツごときは燃えカスも残らないくらい消し去られてるんじゃないかな。
どれどれ。