コンビニで何か買って帰ろう。
和田君の言葉を気にするわけじゃないけど、イブに一人外食なんてしたら、どんな噂が飛ぶかわかったものじゃない。

「北村さん、彼氏いましたよね?」

「あれは彼氏じゃないよ!」

ほらほら、こんな風に隅々まで情報は行き渡っているのだ。

「彼氏じゃなくても一人でケーキ食べるよりはマシですよ。呼び出したらいいじゃないですか」

「仕事忙しいんだって。じゃあお先に失礼します。お疲れ様でしたー」


この町ではもう私に彼氏はできないと思う。
すっかり売約済み扱いだ。
そろそろ本腰を入れて引っ越しを考えないと、来年のクリスマスだって危ういな。

あいつは、今日もムショに引きこもっているんだろうか。
イブなんだからさすがに実家に帰ってるかな?


コンビニのスイーツコーナーの前で長いこと悩んだ。
ケーキを2つ買うかどうか。
アパートの外から様子を見て、いないようだったら帰ればいいんだし。
ケーキだって美弥子さんと食べればいいんだし。
最悪余っても明日食べればいいんだし。