クリスマスを前に一人立ちしていた私はこの後予定もないので、残りの作業を一人で引き受けたのだ。

そんなに遅くならないつもりだけど、いつ終わるとは言えないから美弥子さんには「夕食はいらない」と早々に連絡しておいた。


ところが、後半は慣れてスピードも上がったので、熨斗までつけても残業は結局1時間程度で終わってしまった。
予想外に早い。

美弥子さんには夕食を断ってしまったし、どこかで食べて行こうかな。
選択肢はあまりないけど。

この辺りでも小さくて素敵なお店はきっとある。
でも全然出歩かなくなったせいで全く開拓できていないのだ。

「あ、和田君。この辺でご飯食べるのにどこかいいお店知らない?」

フリーターの24歳彼女持ち。
何かしら情報はあるだろう。

「北村さん、デートですか?」

「違うよ。単純に夕食の話」

「えっ!今夜一人で外食するんですか!?今夜!?」

『今夜』を二度も言われてようやく思い出した。

「あ、クリスマスイブだったっけ」

和田君は自分の星に帰れなくなった地球外生物を発見したような、哀れみと驚愕を顔に浮かべている。

「北村さん、枯れてますねー」

「失礼だね。和田君だってバイトしてるじゃない」

「俺はこの後彼女と約束してます」

「わかった。いい。・・・もう帰る」