肩すかしをくらって、こっちが逆に戸惑っていると、

「北村さん、お知り合い?」

と声がかかった。
入り口のガラス扉から身体を半分覗かせるようにして、中島さんがこちらを見ていた!

見られた!中島さんに見られちゃったよ。
こんなところを見られて他人のフリはもうできない。

「ええ、まあ、今偶然会って・・・」

「もしよかったらご一緒しませんか?」

中島さんがトモ君をサラリと誘った。

「いや、彼は今もう帰るところなんです!」

さっさと帰しておけばよかった!
こんな展開予想できなかったけど。
帰れ帰れ、とトモ君をグイグイ押すけれど、中島さんは意に介さず直接トモ君に尋ねる。

「あれ?お時間ありませんでしたか?」

そのペースに巻き込まれて、戸惑いながらトモ君も答えた。

「時間はあるけど・・・」

おい!「ない」って言っておけ!

「じゃあ遠慮しないで。是非!」

中島さんのさわやかな笑顔に押される形で、私たちはトモ君を連れて席に戻った。