本格的にハローワークまで救援依頼に走ろうか検討し出した頃、背後からガタガタと軽トラックがやってきた。
さっき軽自動車が通ったのだから通れなくはないはずだけど明らかに通行の邪魔をしている私に、運転席から降りてきたおじさんが声をかけてきた。
「どうしました?━━━━━あれ?」
「あれ?」はこっちのセリフ。
作業着に帽子。首にタオルを巻いてゴム長靴で軽トラから降りてくるんだから当然おじさん、もしくはおじいちゃんだと思っていたら、明らかに声が若くてびっくりした。
近づいてきて確信する。
日焼けしていて年齢がわかりにくいけど、間違いなくお兄ちゃんだ。
というより、私より少し上程度じゃないかな?
〈洗練〉なんて食えないものは薪と一緒に風呂焚きに使いましたってくらい冴えない雰囲気。
いくらなんでももう少し身なりに気をつければいいのに。
そんなことを考えている間にも、お兄ちゃんは田んぼの側に回ってタイヤをのぞき込んでいた。
「ちょっとアクセル踏んでみて」
「あ、は、はい」
言われた通りにアクセルを踏む。
ギュルルルルルルルル
やっぱり変わらない音と、動く〈気配だけ〉の車。
お兄ちゃんは何も言わずに自分の軽トラに戻り、ゴソゴソと麻袋を持ってきた。
助手席側のタイヤの下にその麻袋をぎゅうぎゅうと押し込んで、
「ハンドル右に切って、もう一回アクセル踏んで」
「は、はい」
ひたすら言われた通りにする。
ギュウウウウウン
グワンと車が持ち上がって、無事に道路に飛び出した!