慌てて運転席から降りて回り込んでみるけど、何がどうなっているのか私が見たくらいじゃわからない。
別に溝にはまりこんでいるわけでもないし。
つまりはどうしたら事態を打開できるのか、見当もつかないのだ。


・・・・・・・・・・・・・・。


悲しいことに、特別急ぎの用事もないから途方に暮れる時間だけはたっぷりある。

JAFってどうやって呼ぶのかな?
会員登録が必要なんだっけ?
レッカー車を依頼すればいいの?
高いのかな?
あんまりお金ないんだけど、後払いOK?
そもそも、ここはどこ?

ナビを動かして現在地を確認する。
一番近い建物はハローワークだ!

そういえば、吹雪で遭難したあとに実は町が目の前だった、なんてこともあるんだっけ。
私は目的地であるハローワーク(ここからは見えない)を目前にしながら、田んぼの真ん中でひからびるのかな。

それともこんな車(美弥子さんごめんなさい)は放り出して、ひとっ走りハローワークまで助けを呼びに走るべきなんだろうか。
職員を総動員すれば引き上げることは可能なんじゃないかしら?

いやいや、まずは美弥子さんに電話だ。

と、基本に立ち返って美弥子さんの携帯を鳴らすも、全然出ない・・・。

これだからじいさんばあさんはっ!
携帯を携帯しない率が高すぎる!

孫が遭難(?)しかけているのに、どうせ家の前で「佐々木さんとこの菊が今年もまあ見事だこと!」なんて話してるに違いないんだ。
私が遺体で発見されたあかつきには、佐々木さんの菊で祭壇を飾ってくれ。