「どうしました?━━━━━あれ?」
道の途中で停車している黄緑色の車。
小田切さんだと思って話しかけると、傍らにいたのはスラリとした脚を投げ出す女性。
20年ぶりに会う、芽実ちゃんだった。
芽実ちゃんはものすごく綺麗になっていたけど、全然変わらず「メミちゃん」だった。
泣いて笑って怒って生きる。
この世界を素直に楽しんでいる人。
彼女を見ていると、好きなものを好きと言っていいんだって思う。
楽しんでいいんだ。
笑っていいんだって。
なんでこんな簡単なことが、僕にはできなかったのだろう。
どうせこの世は幻なのだから、もう少し芽実ちゃんを見ていたい。
いずれいなくなる人だから、僕なんかとは釣り合わない人なのだから。
もう少しだけ、もう少しだけ。
そうして僕は、もう引き返せないところまで彼女を好きになっていた。
もしかしたら最初から。
彼女を好きになって、僕は彼女から二度目の絶望を教わった。