正社員の話を受ける旨、店長に伝えるとトントン拍子で採用となった。

いろんな覚悟を決めたというよりは、とりあえずトモ君と一緒にいるための選択をしたということだ。
ヤツと一生付き合うなら、自分の生活は自分で面倒見られるだけの甲斐性がなければ。
ゴージャスな暮らしをしたいわけじゃないのだから、なんとかなるだろう。


店舗は一緒だけど、社員の仕事は膨大にあって、当たり前だけどかなり忙しい。
休みだって少ない。
(ちなみにお給料も大したことない。)

どっちが社員かわからない工藤さんに尻を叩かれながら、茉莉花ちゃんの尻をなでながら(比喩ですよ!)、毎日奮闘するのは嫌いじゃない。

実は事務作業が大嫌いな店長にガンガン仕事を押し付けられるのは腹が立つけど!
(あの人はこのために私をスカウトしたに違いない)


トモ君の方も雪が溶けるといよいよ今年の米作りが始まるので、休むのは自由といえど忙しいらしい。



そんな私たちが久しぶりにデートをしているのは、隣の市にある大きなスーパーのフードコート。

平日の午前中だからガラガラで、店員さんたち以外には私たちしかいない。
と言っても、スーパーの方にはお買い物をする奥様方がポツポツいる。

車で30分かけて来ても、こんなに人がいない状態でも、午後には私たちがデートしていたことが伝わっているはずだ。

ふふん、浮気もできまい。
ざまーみろ。

心の中でひっそりほくそ笑んでいると、ガッタガッタのテーブルの上に全く似つかわしくないブツが置かれた。

まさか、ここで?
こんなタイミングで?

無言のままその濃紺の小さな箱を開けると、予想を超える指輪がどっかりと座っていた。
生意気にもダイヤモンドが1つ、2つ、3つ・・・これ、結構大きいよ!

いつだったかトモ君が妄想で言ってた通りのものだ。

妄想と一緒なのは指輪だけで、〈ロマンチック〉なんて言葉は・・・(以下略)