これは、マズイ。
こんなキスされたら誰だってこの人を好きになっちゃう。
モテるっていうのは、本当かもしれない。
キスまでのハードルがやたら高いことだけが、今は救いだ。



おかげさまで、たった数分のうちにすっかり欲求不満になってしまいました。
この震えるほどの渇望、どうしてくれる!

まじまじと私の顔をのぞき込む満足気なその目に吸い込まれながら、本能に身を委ねた。

「足りない」

嬉しそうに目を細めて、さっきより深く口づけてくれる。

「まだ」

今度は少し長めに。

「もっと」

遠慮も何も捨てて飲み込むように激しくしてくれたけど━━━━━

結論。
キスだけではどうしても足りない。

「まだ。もっと。全然足りない」

もう一度くっつこうとする私を、珍しく乱暴に押し返してきた。

「芽実ちゃん、これ以上は。大人だからわかるでしょ?」

「もちろん。わかって言ってるのよ」

「帰せなくなるからダメ。小田切さんが心配する」

「美弥子さんには泊まるって言ってきたから大丈夫。バランのくせに余計な気遣いは無用。食べてもらえるうちに食べられておきなさいよ」

「は?バラン?食べる?」

今その説明は面倒臭い!

伸びたTシャツの襟を更に引っ張って、まだ納得していない口を塞いでやった。