「私、トモ君が好きだよ」

言った!言ってやった!

難関をクリアし、後は自然に流れていけるだろうと、満足のため息をついた。
ところが、

「ありがとう。その言葉でもう十分だよ。心配して来てくれたんでしょ?ちゃんと立ち直るから、もう少しだけ一人にしてくれないかな?」

真っ直ぐ投げたはずのボールが届いていない。

下手な紙飛行機に似てる。
必死に前に飛ばしても斜め下に落下したりするやつ。


私はどこか逃げているんだろう。
素直に気持ちを言葉にするって、やっぱり恥ずかしくて、ちょっと誤魔化してしまったのも事実。

逃げ道を作ってのぞめば、相手にも逃げ道を与えてしまう。
トモ君だって、ずっと「好きだ」と言い続けても本気でぶつかって来なかったから、私もまともに相手にしなかった。

このままではお互いの「好き」は隙間からこぼれ落ちてひとつにならない。


恥ずかしがらない。
逃げない。
確実に捕らえる。

「違うの。ちゃんと聞いて。朋晴さん。私はあなたが好きです。私と付き合ってください」

トモ君の空気が変わった。
やんわりと私全体を見ていた視線が、まともに合わされる。

「も、もう一回聞いていい?聞き間違いかもしれないから」

「朋晴さんが好きです。私の恋人になってください」

「・・・もう一回」

「トモ君が好き」

「もう一回」

「好きって言ってるの!さすがにもういいでしょ!」

トモ君は小刻みに震えだした。
アルコール飲み過ぎた?

「だって、信じられない!芽実ちゃんが僕を?万にひとつもあり得ないことだよ」

「あんたが十億回くらい「好きだ」「かわいい」って言ってたから可能性上がったんじゃないの?」

「一応確認していい?その「好き」って恋愛の意味だよね?触ってもキスしても嫌じゃないってことでいいの?」

「しつこい!だからそうだって!」