なぜか気まずさの波に襲われた私が『……あれ、航は?』と尋ねれば『トイレ』と淡々とした頼くんの声になるほど……と1人納得した。


もちろん、このタイミングでトイレとか何で!?って内心航に文句を言ったけれど、トイレなんて自然の摂理だし、仕方ないってことくらい分かってるよ。


ごめんね、航。




そして、お菓子やジュースの入った袋を『良かったら2人でどうぞ』と頼くんへ差し出した私に、頼くんは少しの沈黙の後、突拍子もなく告げた。

袋を受け取るでもなく、笑うわけでもなく、ただ澄ました顔で


『……協力してやろうか?』って。



そう。そして、今に至る。


かれこれ3分程の間に、色んなことが起きすぎて……いや正確には1つしか起きていないんだけれど、


思いもしなかった頼くんの提案に私の頭はまだついていけていない。



「……でも、頼くんには何の得もないんじゃない?」

「さぁ?」

「さ、さぁ……って、」

「協力、して欲しいか、して欲しくないか。どっちか選べよ」


ダメだ。
全然話になりゃしない。

頼くんと話したのは別に今日が初めてじゃない。いつも家に遊びに来た日は、必ず1度はばったり会って、どうでもいいことで話しかける。


そして、少しだけだるそうな頼くんがそれに答えてくれる。


見た目は犬系男子なのに、中身はすっごいクールで、話すとほんの少し冷たそうな雰囲気も感じるけれど、無視されたことはないし、私は頼くんの雰囲気が嫌いじゃない。