「思ってることぜんぶ顔に出ちゃう三津谷のこと、俺、嫌いじゃないよ?」
「……思ってること、ぜんぶ……出てますか」
「うん。ぜーんぶ、顔見れば分かる。だから、すげえ可愛い」
うんっと、甘い声で真っ直ぐ目を見て告げられる言葉に逃げ出したくなった。
”可愛い”なんて、涼くんにしてみたら挨拶みたいなものなのかもしれないけれど、言われ慣れてないせいで、返し方も分からない。
「か、可愛いとか、また私のことからかって……。それより涼くん、私に何か用事があったんじゃ」
生徒玄関前の廊下掃除担当の私。
教室掃除担当の涼くん。
ごみ捨てに行く途中でも、帰りでもなさそうだし。もしや、わざわざ私に会いに来たの?いや、でもなんで?と、永遠自問自答を繰り返す。
そんな私に、
「三津谷、明日、俺とデートしよう」
爽やかな笑顔と、爽やかな香りで涼くんがグイッと迫る。そのまま私の頭にポンッと手を乗せて、髪に指を絡ませながら滑らせた。
「……デ、デート?」
「そう。三津谷を1日、独り占めしたくて。明日1日、三津谷の時間、俺にちょうだい?」
全くサッパリ分からない。
私の時間を涼くんに……あげる?
涼くんと、私がデート……?