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目の下のクマを気にしながら過ごす一日は、それはそれは最悪。
おまけに、頼くんと会えないままもうすぐ放課後を迎えようとしている。
今日は華金。
掃除をしながら放課後やら土日やらの予定を楽しそうに話している周りとは違って、死んだ魚のような目でほうきに全体重かけた私はボーッと窓の外を見つめる。
「……三津谷」
「え……?」
そんな私を呼ぶ声に、あっちの世界に逝きかけていた私はハッと我に返れば、思わず目を見開くほどの至近距離に涼くんの顔があった。
「さっきから何回も呼んだんだけど、心ここに在らずって感じ。大丈夫?調子悪い?」
「だ、大丈夫!ちょっと寝不足でボーッとしちゃってた」
慌てて1歩、後ろへと後ずさる。
そんな私を見て、涼くんはクスッと小さく笑った。
「俺、警戒されてる?」
「え?……け、警戒とかじゃなくて!ちょっとビックリしただけで、深い意味は」
ブンブンと胸の前で両手を振って見せれば、またしても涼くんが小さく笑う。
「可愛いよな、三津谷は」
「っ!」
ドキッとする心臓。
涼くんの言葉に、口は半開きで言葉は出ない。