「消せ」


「え?」


「涼の匂いとか、すげぇムカつく」


「頼くん、香水嫌いなの?この前も、私の香水禁止って言ってたし.......でも、頼くんも香水使っ」



───グイッ



「なんで、伝わんねぇの。バカなんじゃね」


「.......っ!」



ギュッと強く、強く、強く。
痛いくらい私を抱きしめる頼くんの腕。


さっきまで感じていた涼くんの匂いは、一瞬で頼くんの匂いに上書きされる。




「消えればいいのに」


「あの、頼くん……?」



相変わらず私の全部を包み込んで、頼くんと溶けて混ざっちゃうんじゃないかってくらい強く抱きしめておきながら、


私の髪をすべる頼くんの手は、どこまでも優しくて。



何がどうなってこうなったのか、全然頭は追いつかないけど、ドキドキしすぎて泣きたくなってきた。



「涼の匂いも、花の気持ちも全部。俺で上書き出来ればいいのに」


「えっ……?」



勘違い、しそうになる。
もしかしたら本当は頼くんも私のこと……って。