「あの、何ってほどのことじゃないんだけど」
「.......何ってほどのことじゃない?こんなに花から涼の匂いがするのに?」
感情の読めない頼くんは、私から目をそらすことなく、抑揚のない声を私に降らせる。
「お試し!そう、涼くんの香水を少しお試しさせてもらったの」
「.......は?」
「頼くんに甘めの香水は禁止されちゃったから、違う香水試そうかな〜.......って」
「マジで、バカなんじゃねーの」
「バ、バカって!酷い」
はぁ、と大きく不機嫌そうにため息をこぼして、ジリジリと私との距離を縮めた頼くんは、
ついに私を壁まで追い込むと、そのまま私の両側に肘をついて私から逃げ道を奪った。
「ち、近いよ、頼くんっ」
「そう?」
「そ、そうだよ」
「全然、遠いんだけど。全然、縮まんねー」
言いながら、切なげに揺れた頼くんの目から目が離せない。頼くんは、私と涼くんのことを応援してくれてるんだよね?
……なんで、そんな顔するの。
期待しちゃうようなこと、しないで欲しい。