「お、怒ってないよ!ちょっとビックリしたけど。大丈夫、今日も香水付けてないから匂いが混ざったりもしないし……!」


「ほんと?良かった……!じゃあ、今日は家に帰るまで俺とおそろいってことで」


「……う、うん。おそろいってことで!」



ニコッと優しく笑う涼くんに、同じく笑顔を返しながらも、頭の中に頼くんがチラつく。


別に涼くんと同じ匂い……なんて、変な意味はないのに。どうしてだろう、頼くんには絶対に言えないって思うのは。


「じゃあ、俺帰るけど。三津谷はどうする?」


「……あ、私、美和子ちゃん待ってるんだ」


「そっか、残念。じゃあ、また明日ね」



ざ、残念って……。
もしかして私と一緒に帰れなかったことが……?


いやいや、まさかね?
なんだろう、最近の涼くんは意味深な発言が多いって言うか……いや、涼くんが掴めないのは今に始まったことじゃないんだけど。



涼くんが教室を出ていくのを見送って、ふぅと大きく息を吐き出す。その瞬間、ふわっと香る涼くんの匂い。



……そっか、今日は家に帰るまで、涼くんとおそろいなんだった。