「三津谷って、いつもすれ違うだけで甘くていい匂いするし」
───っ!!
……それって、この香水のこと!?
だとしたら涼くんは、別にこの匂いが嫌いなわけじゃないのかな。
ってことは、やっぱり頼くん本人が嫌ってことになる。うぅ、お気に入りだったけど仕方あるまい。……二度と使わないことにしよう。
そう思って、手に持っていた香水のボトルをカバンの中へ放り込もうとした私の手を、涼くんの手が優しく捕まえた。
「あー、三津谷の匂いってこれ?」
「あ、うん……そう。可愛いから買ったんだけど、もう使わないことにしようかな〜って思ってたところだったんだ」
「なんで?俺、好きだよ。この匂い」
涼くんに掴まれている手が熱い。
ドキドキとうるさいくらいに心臓は高鳴る。
頼くんが好きだって自覚したくせに、私のバカ!
「……り、涼くんもいつもすごくいい匂いがするよね!香水使ってるの?」
何とか話題を逸らして、この手を解放して欲しいと願う私に「あぁ」と呟いた涼くん。
すぐに私の願いは叶って、涼くんが爽やかな香りを残して私から離れた。