今となってはもう安心感すら覚えるその匂いに、知らず知らずのうちに酔っていたのかもしれない。
頭がボーッとして、何も考えられない。
「だから隙ありすぎなんだよ、花」
「頼くんが……!」
不意打ちすぎるんだよ。
そんな言葉は、再びギュッと、さっきよりさらに強く私を抱きしめる手に力を込めた頼くんのせいで、声にならないまま。
「ん、俺が?」
頼くんの顔は見えないけど、絶対に今、意地悪く口角上げて笑ってるんだろうなって思う。
「……っ、もう!離してよ」
「俺が?花だって、逃げようと思えば自力で逃げられるくせに」
「そ、それは」
「本当に離していいわけ?」
「っ、意地悪!」
私を試すような口ぶりで、フッと小さく笑った頼くんが、今度こそ私から離れていく。
頼くんのせいで熱を持った体が空気に晒されて、どこか寒いような気さえしてくるから困る。
「顔、真っ赤」
「頼くんのせいじゃん!頼くんが、昨日から……キ、キスしたり、抱きしめたり……不意打ちばっかりするから」
言いながら、もう頼くんの目は見れなくて。
だんだん萎れていく声のボリュームに、自分が情けなくなる。