翔太さんと結ばれた私は、今までに感じたことのない幸せを感じていた。
…だけど、それと同時に罪悪感も芽生えた。
勇気を出して私に告白してくれた裕紀先輩。
そして、翔太さんにずっと想いを寄せていた水瀬さん。
この2人をおざなりにして、私達だけが幸せになってもいいのかと。
━━━考えに考え抜いた結果、私は2人と直接会って決着をつけることに決めた。
そんなある日のことだった。
仕事が休みだった私は、裕紀先輩と会う約束をしていた。
もちろん、翔太さんには許可を取っている。
私が「裕紀先輩に会いに行きたいです」と言った時、翔太さんはひどく心配して、私を行かせるかどうか迷っていた。
だけど私は「裕紀先輩は危ない人じゃないですよ」などと言って翔太さんを説得させた。
…だって本当に危ない人じゃないし。
そんなこんなで裕紀先輩と会うことになった私は、少し緊張した面持ちで前に一度だけ来たことのある薄暗い路地裏を歩いていた。
ずんずんと路地裏の奥に入っていくと、目的地に着いた。
その場に相応しくない明るいイエローの外壁と手書きの看板が特徴的な「ハチミツカフェ」だ。
ドキドキしながらお店のドアを開けると、このお店で1番人気らしい、ゆったりとしたソファ席に裕紀先輩が座っていた。
裕紀先輩は私を見つけると、大きく手を振って私の名前を呼ぶ。
私は裕紀先輩に小走りで駆け寄り、こう言った。
「裕紀先輩、お待たせしてすみません」
裕紀先輩はニコッと笑ってこう言う。
「俺が早く来すぎただけだから気にしないで。さ、座って」
裕紀先輩はテーブルを挟んで向かい側のソファ席を指さし、私に座るよう促す。
私は裕紀先輩に促されるまま、ふかふかのソファ席に座ると、さっそく話を切り出した…が。
「裕紀先輩、あの…」
「梅ちゃん、何注文しようか」
「いや、あの…」
「あ、もしかしてもう決めてる?」
「あのっ、そうじゃなくて…」
「このお店、美味しそうなものばっかりで悩むよね」
とことん私の話を邪魔する裕紀先輩。
まるで私が今から話す内容が分かっているみたいだ。
『…しょうがない。注文してから話すことにしよう』
そう決めた私は、メニュー表を見てパッと目に入った「ハチミツドーナツ」を注文することにした。
私がハチミツドーナツを注文すると知った裕紀先輩は、「あ、それ美味しそう。俺もそれにする」と言った。
そうしてハチミツドーナツを2つ注文した私達。
私は気を取り直して話を切り出す。
…しかし。
「あのですね、裕紀先輩…」
「ハチミツドーナツ、来るの楽しみだね」
「あの…」
「俺のドーナツも少し分けてあげようか?」
「裕紀せ…」
「梅ちゃんは食いしん坊だもんね」
再び私の話を邪魔する裕紀先輩。
今はドーナツのことよりも裕紀先輩に伝えたいことがあるのに…。
『このままじゃ何も伝えられない』と思った私はテーブルに手をついて立ち上がり、大声でこう言った。
「裕紀先輩に伝えたいことがあるんですっ!聞いてくださいっ!!」
その瞬間、お店にいた人達は皆静まり返り、皆の視線が私に集中した。
死ぬほど恥ずかしいけど、どうしても伝えたいから、こうするしかなかった。
そんな私を見た裕紀先輩は、少し下を向いたあと、ばつが悪そうに「わかった」と言った。
それを聞いた私は再びソファに腰を下ろす。
すると、私に集中していた視線はばらけた。
こうして私は今度こそ裕紀先輩に話を切り出した。
…だけど、それと同時に罪悪感も芽生えた。
勇気を出して私に告白してくれた裕紀先輩。
そして、翔太さんにずっと想いを寄せていた水瀬さん。
この2人をおざなりにして、私達だけが幸せになってもいいのかと。
━━━考えに考え抜いた結果、私は2人と直接会って決着をつけることに決めた。
そんなある日のことだった。
仕事が休みだった私は、裕紀先輩と会う約束をしていた。
もちろん、翔太さんには許可を取っている。
私が「裕紀先輩に会いに行きたいです」と言った時、翔太さんはひどく心配して、私を行かせるかどうか迷っていた。
だけど私は「裕紀先輩は危ない人じゃないですよ」などと言って翔太さんを説得させた。
…だって本当に危ない人じゃないし。
そんなこんなで裕紀先輩と会うことになった私は、少し緊張した面持ちで前に一度だけ来たことのある薄暗い路地裏を歩いていた。
ずんずんと路地裏の奥に入っていくと、目的地に着いた。
その場に相応しくない明るいイエローの外壁と手書きの看板が特徴的な「ハチミツカフェ」だ。
ドキドキしながらお店のドアを開けると、このお店で1番人気らしい、ゆったりとしたソファ席に裕紀先輩が座っていた。
裕紀先輩は私を見つけると、大きく手を振って私の名前を呼ぶ。
私は裕紀先輩に小走りで駆け寄り、こう言った。
「裕紀先輩、お待たせしてすみません」
裕紀先輩はニコッと笑ってこう言う。
「俺が早く来すぎただけだから気にしないで。さ、座って」
裕紀先輩はテーブルを挟んで向かい側のソファ席を指さし、私に座るよう促す。
私は裕紀先輩に促されるまま、ふかふかのソファ席に座ると、さっそく話を切り出した…が。
「裕紀先輩、あの…」
「梅ちゃん、何注文しようか」
「いや、あの…」
「あ、もしかしてもう決めてる?」
「あのっ、そうじゃなくて…」
「このお店、美味しそうなものばっかりで悩むよね」
とことん私の話を邪魔する裕紀先輩。
まるで私が今から話す内容が分かっているみたいだ。
『…しょうがない。注文してから話すことにしよう』
そう決めた私は、メニュー表を見てパッと目に入った「ハチミツドーナツ」を注文することにした。
私がハチミツドーナツを注文すると知った裕紀先輩は、「あ、それ美味しそう。俺もそれにする」と言った。
そうしてハチミツドーナツを2つ注文した私達。
私は気を取り直して話を切り出す。
…しかし。
「あのですね、裕紀先輩…」
「ハチミツドーナツ、来るの楽しみだね」
「あの…」
「俺のドーナツも少し分けてあげようか?」
「裕紀せ…」
「梅ちゃんは食いしん坊だもんね」
再び私の話を邪魔する裕紀先輩。
今はドーナツのことよりも裕紀先輩に伝えたいことがあるのに…。
『このままじゃ何も伝えられない』と思った私はテーブルに手をついて立ち上がり、大声でこう言った。
「裕紀先輩に伝えたいことがあるんですっ!聞いてくださいっ!!」
その瞬間、お店にいた人達は皆静まり返り、皆の視線が私に集中した。
死ぬほど恥ずかしいけど、どうしても伝えたいから、こうするしかなかった。
そんな私を見た裕紀先輩は、少し下を向いたあと、ばつが悪そうに「わかった」と言った。
それを聞いた私は再びソファに腰を下ろす。
すると、私に集中していた視線はばらけた。
こうして私は今度こそ裕紀先輩に話を切り出した。