「アイツは、本当に誰のことも好きになんかならねぇんだよ。オレは、わかるから……」


「…………前にも、同じこと言ってたね」



漆黒のプリンスのその訳を知ってるかと、私に聞いてきたのは国崎くんだった。



「楓と関わって、もし何か起きれば……お前だって、きっと後悔するぞ」


「………な、何か起きる?」


「もしもの話だ。ったく、どういうつもりでお前と関わり始めたんだか………」



独り言のような声に心臓が嫌な音をたてる。


思い返せば……椎名くんは、どうして私に声をかけてくれたんだろうってことに、理由を聞いたことはなかった。


“偶然”。

図書室の窓辺に私がいて、春風さん達に追い回されている椎名くんが偶然、私を見つけた。


ただ、偶然が重なっただけ………。