唇を尖らせて再びそっぽを向いてしまったけれど、私はようやくあることに気づいた。


国崎くんが今日一度も私のことを、“不気味”って呼んでいないことだ。


お前……とは呼ぶけれど。

私にはそれが嬉しくて、悪魔だなんて呼んだことを、心の中で謝った。



「え、と……。国崎くん。今さら話を聞いてもらっておいてあれだけど、いいのかな……?」


「あ?何が?」


「だってこないだ、私と関わるとろくなことがないって言ってたから……」


「っ、あれは、別に本気で言ったわけじゃ……、」



そう言われても、あの時は確実に悪魔の角も生えていたわけだし。



「アレは、ただの……八つ当たりみてぇなもん……」


「八つ当たり?」


「………楓が、お前を好きだとか言うから」


「え。国崎くん………もしかして、椎名くんのことが好……、」



ベシッ!!と。

手加減なしでおでこを叩かれた音が廊下に響く……。