* * *
「………どう見ても怪しいだろ、お前」
「ヒッ!!あ、悪魔………っ、」
翌日の放課後。
進路指導室がある一階の廊下の角に、ジッと身を潜める私の背後から悪魔の声が降りかかる。
「あ?オレが悪魔だと?ふざけんなよ」
「すみません………」
「だからいちいち謝るんじゃねぇよ……。つーか、まさか……覗きでもしてるのか?」
「覗きなんて……っ、違います!私は、ただ正木さんと話がしたくて……っ、」
どうしても、昨日の辛そうな正木さんの顔を思い出したら、黙ってこのまま創立記念祭の準備には取りかかれそうになかった。
そう言いつつも結局、進路指導室へと入っていた正木さんを見つめるだけで、声をかけることは出来ず。
「あの才女の正木に?お前が……?」
部活帰りの国崎くんは黒いボストンバックを肩にかけると、切れ長の目を細くして、訝しげに私の目を覗き込んできた。