「………正木、さん?」



だって、あんなに嬉しそうにしていたのに。


ーーー“ねぇ、次の創立記念祭は、わたしと一緒に回ってくれない?”


今年は、二人で一緒に………。



「っ、全部、本当のことよ。ごめんなさいね……月城さんに、言わなくて……」



ぽつり、と。
 
立ち上がった私をほんの僅かに視界に入れると、小さく落とした声が震えていた。


交わされることのない視線の先には、大好きな恋愛小説の代わりに、頭が痛くなるくらい厚みのある難しい参考書……。



「あぁ、いたいた!正木ー!明日の放課後、進路相談室まで来てくれないか?ご両親から連絡をもらってなぁ……」



担任の先生が突然顔を出すと、苦笑いを浮かべて、目を伏せる正木さんへと告げた。


こんな時、私が正木さんの“友達”なら……。


なんて言葉をかけるべきなんだろうって、迷うこともなかったのかな。