唖然としたまま目だけを動かせば、不快に満ちた眉をさらに険しくする春風さんが私を睨んで言った。
「なにその顔?笑えるんだけど。誰だって知ってる話なのに……不気味ちゃんはいつも独りだから、まぁ知らなくて当然だよね?」
楽しそうに声を漏らす春風さん。
その通り、私は知らなかったけど。
名門校に通っていた気品溢れる正木さんはお嬢様だということは、なんとなく先日の会話や高級車を目にして気づいたこと。
学業を優先しなくてはいけないことや、必要のない外出も出来ない理由を、事実を知った今、妙に納得してしまう。
でも私が知っていたかどうかなんて今は関係ない。
そうじゃなくて、伏せるように俯く正木さんが今、何かを堪えるように辛そうで。