「だから、オレが好きだって言えばいいだろ?」


……と。

窓に背中をつけた私の頭の横に、ゆっくりと手をついた椎名くんは、角度を変えるように首を傾けて私に囁いた。



「……っ、」



突然のことに逃げ場を失った私。

椎名くんの顔が目の前にある事実に、爪先から頭のてっぺんまで甘く痺れてしまう。


呼吸を忘れた私は、ただただ椎名くんに言われた言葉を心の中で繰り返していた。


………私が、椎名くんを好き?



「ただの練習だろ?」


「……それは、そうだけど。私は、椎名くんのこと好きだなんて言えな……、」



続きを阻止するように、私の顎を指先でつまむと、自分の方へと向かせる。



「だったら抵抗してみれば?好きじゃないんでしょ、オレのこと」


「し、椎名くん……っ、」